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山﨑家文書  

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年4月1日更新 ページID:0339283

市指定有形文化財(古文書)

 
ふりがな やまざきけもんじょ
文化財名 山﨑家文書
指定番号 93
種別 有形文化財・古文書
員数 4点
指定年月日 令和5年3月24日
所在地 上尾市教育委員会

【概要】
 本件は、江戸時代後期に上尾宿で俳人・教育者として活動した山﨑武平治碩茂を輩出した山﨑家に伝来した書簡4通である。各書簡は、上尾宿に創設された郷学・聚正義塾に関係する人物らから碩茂に宛てて送られたものである。
 聚正義塾は、天明8(1788)年に上尾宿に来遊していた江戸の学僧・雲室の指導を受け、上尾宿の碩茂ら有志によって創設された郷学である。その学舎は天満宮跡地に建てられ、朱文公(朱子)と菅原道真を祀ったことから二賢堂と名付けられた。雲室は4年ほどで上尾を去るが、同塾は碩茂らによって引き継がれ、文政9(1826)年に碩茂が没した後も、安政7(1860)年ごろまで存続したとされる(市指定史跡「上尾郷二賢堂跡」)。
 第1通は、碩茂をはじめ、上尾宿の人物と考えられる石應、太素、木奴に宛てて雲室が送った書簡である。内容は「雲室上人生祠碑頌」について、碑石の見立てが終わったこと、文章も決定しているので相談の上で立碑してほしいことが記載されている。また、晩年を迎え体が弱っているが、できあがった碑を見に参上したいことが記述されていることから、立碑前の書簡と考えられる。生祠碑頌の碑文には文政6(1823)年4月と刻まれていることから、文政5年または6年に発出された書簡であると推察される。なお、宛名書きのうち、「石應」は友光石應であり、書簡中に言及されている「玄壽」は上尾宿の医師であった美濃部玄壽を指しており、遍照院に墓石が現存している。「太素」「木奴」については、上尾宿の人物と考えられるが、詳細は不明である。
 第2通は、市河三亥(米庵)が碩茂に宛てて送った書簡であり、門中の会津藩士・山内熊之助が本庄宿に赴く道中、上尾宿の碩茂に一宿を頼むとともに、「二賢堂碑之義」について言い含めてあることが記述されている。米庵は市河寛斎の長子で、能書を以て名声を博し、幕末の三筆に数えられる書家である。「二賢堂碑」とは「上尾郷二賢堂碑記」のことと考えられ、碑記は米庵の書であることから、立碑に関する書簡と考えられる。また、書簡中で米庵が昨年夏に加賀国(石川県)を訪れたことが言及されており、これが文政5年6月のことであることから、この書簡は翌年の文政6(1823)年のものであることが分かる。
 第3通も、米庵から碩茂に送られた書簡である。碩茂の子(山﨑守禮)の勉学や教本等のやり取りについて書かれている。文中に『朶雲帖』(米庵書)ができたことが記載され、同書は文化3(1806)年2月に刊行されていることから、同年の「仲冬初三(11月3日)」に出された書簡である可能性が高い。なお、山﨑守禮の動向は不明だが、遍照院の山﨑家墓所には、碩茂の墓に並び「五世山﨑武右衛門守禮」の墓が現存している。
 第4通は、米庵の父で儒学者の世寧(市河寛斎)が碩茂に送ったものである。子の米庵が上野国(群馬県)に赴く際に、碩茂に一宿を頼むとともに、「拙者百絶」と「三亥一昨年遊行之紀行」を持たせることが記載されている。「拙者百絶」とは寛政9(1797)年12月刊の詩集『寛斎百絶』であり、「三亥一昨年遊行之紀行」は米庵が寛政8年6月から9月に上野国と信濃国(長野県)を旅行した際の詩集『毛信遊草』であることから、本書簡は寛政10(1798)年に出されたものと考えられる。寛斎は湯島聖堂の学頭であり、雲室に依頼され「二賢堂」を命名するなど、郷学創設に協力した人物である。『寛斎百絶』には、天明8(1788)年9月に上尾宿を訪れた際に詠んだ詩が数首掲載され、碩茂が蕨宿で寛斎を出迎えたことも記載されている。
 各書簡は、上尾宿に聚正義塾を創設した雲室をはじめ、同塾に関係する市河寛斎・米庵父子から碩茂らに宛てて送られたものであり、上尾宿の山﨑碩茂と江戸の著名な文人達との間に直接的な人物交流があったことを裏付けている。これらは「上尾郷二賢堂碑記」「雲室上人生祠碑頌」の立碑に関わる資料であるだけでなく、江戸時代後期における上尾宿の様相を知ることができる貴重な資料である。

山﨑家文書(抜粋)

▼第1通 雲室書簡
山崎家文書1

▼第2通 市河米庵書簡
山崎家文書2

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上尾市文化財調査報告
第63集上尾市石倉家住宅調査報告書(平成11年8月6日)
上尾市文化財調査報告
第81集上尾市指定有形文化財平方村石倉家文書目録上尾宿助郷関係(壱丁目村)文書目録(平成19年3月31日)

・『上尾市史 第3巻 資料編』のうち「雲室随筆」
・『上尾市史 第6巻 通史編(上)』
・『上尾市史 第9巻 別編2 金石・文化財』

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