上尾の寺社 33 春日神社(柏座)
市域中心部村々の総鎮守として成立 ことし百年目を迎える神社
「ぐるっとくん」を「柏座郵便局前」で下車し、左手に富士見小学校を見ながらJR上尾駅方向に200メートルほど歩くと、信号手前で右手に神社本殿の背面が見えてくる。右折して境内地の裏面に立つと、石造の鳥居と「春日神社」と刻んだ脊柱を見ることができる。かつてはうっそうとした樹林に覆われた境内地と見られるが、今は伐採されクスノキとケヤキの2本の大木がそびえ立っているだけである。鳥居の傍らに神社の案内板があり、それを見て拝殿に進むことになる。
『神社明細帳』によると、この神社は元は「芝宮(しばみや)社」と称したが、明治40(1907)年8月に柏座境内の「春日社」を合祀(ごうし)し、翌41(1908)年5月に谷津地内の「氷川社」を合祀して、「春日神社」と改称し村社に昇格されたと記されている。境内地は217坪、境内社として八雲(やくも)社・神明(しんめい)社・稲荷(いなり)社が所在するとも記されている。明治末期に全国で神社の合祀運動が盛んになり、政府もそれを推進させるが、春日神社もその結果誕生した新しい神社である。それでもことしは、ちょうど神社成立から100年命を迎えたことになる(『上尾市史』第9巻)。
江戸時代末期に編纂された『新編武蔵風土記稿』によると、「芝宮明神(みょうじん)社」は柏座村の鎮守であり、「春日社」は柏座・春日谷津の「氷川社」は、谷津・宮下・向山・大谷本郷(以上は上尾市)・別所村(さいたま市)など五村の鎮守とある。一方宮下村の項では、「宮下村ノ名義ハ今谷津村ニテ司レル氷川社、モト当村ノ持ニテ近村ノ総鎮守ナレバ、其宮アリシヲ以テ名トセリト言」と記している。これらの記述を踏まえ、合祀前の春日社・氷川社を合わせると、鴨川両岸にまたがる広大な村々の総鎮守であったことになる(前掲書)。
春日神社の本殿は昭和18(1943)年の建造、参堂にある二対の石灯籠(いしどうろう)も大正6(1917)年・昭和2(1927)年の建立と、いずれも神社合祀以降に建てられた新しいものである。ところが境内地の北東の隅に江戸時代建立の石祀(せきし)が3基残されている。向かって右側の石祀は屋根を載せた龕(がん)形式のもので、「大歳神」の文字が読み取れ、側面には寛延3(1750)年の年号も見られる。あとの2基は庚申塔で、正徳2(1712)年と延享元(1744)年建立である。古い石祀も、地区民が大事にしている様子が伺える(前掲書)。

現在はすっきりとした景観の春日神社