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令和8年2月28日 江川下流域の早春の動植物観察とサクラソウ育成苗植栽活動

印刷用ページを表示する 掲載日:2026年3月18日更新 ページID:0416111

 「上尾いきもの保全調査団」の6回目の動植物調査イベントです。春の訪れが感じられる季節と思いきや!?春本番のような暖かい日が結構あります。この日も4月のような陽気と思っていましたが、途中からは風が強く吹いていました。
 今回も県内で幅広く自然環境の保全活動に取り組んでおられる公益財団法人埼玉県生態系保護協会の皆さんに、ガイドしていただきました。また、この日は埼玉大学大学院の深堀教授にも御参加いただきました。​

トラスト17号地

 「トラスト17号地」に隣接する農地は草地のような環境になっていて、毎回、植物や昆虫が確認されています。たびたび登場する早春の植物のホトケノザですが、今回はこの植物に2種類の花があることを教えてもらいました。「開放花」と「閉鎖花」​があり、開放花は蜜を求めてくるハチなどの昆虫に花粉を運んでもらい種子を残しますが、一方で閉鎖花は自分の雄しべを雌しべにつけて種子をつくる「自家受粉」をします。この場合、種子はもとの植物と基本的に同じ遺伝子となります。環境の条件がよくないと閉鎖花になりやすいらしく、外来種のヒメオドリコソウが混じると交配をさけるために閉鎖花が増えるそうです。植物自身による種を守るための機能だと思うと、自然の奥深さを感じさせられます。また、ホトケノザの種子には甘い部分があり、アリが種子を巣まで運び、甘い部分を食べた後に残りの種子を捨てることで、ホトケノザは離れた場所に増えることができるそうです。アリとホトケノザはもちつもたれつの共生関係なんですね。
 この時期にきれいな水色の花を咲かせるオオイヌノフグリは、身近な植物と思いきや、実は西アジアやヨーロッパ原産の外来種です。一面にはびこってしまい、在来植物との間で生育場所を取り合うこと(競合)が心配されます。同じ仲間の在来種としてはイヌノフグリという植物がありますが、最近ではほとんど見ることができない希少な存在になっているそうです。ちなみに担当者もイヌノフグリは見たことがありません。

春の陸生野草の観察 野草の生態の解説
春の野草を観察しました(左)、野草の生態や形態にはいろいろな理由があるようです​(右)

 昆虫については、一見いないかな…と思いきや、よくよく見ていると、多数の飛んでいる虫がいるのがわかりました。その正体はニホンミツバチで飛び回りながら、花の花粉を集めていました。花に一瞬ふれているだけのように見えますが、それでも花粉を集めているそうです。確かに足にはまとまった花粉がついていました。養蜂で使われるセイヨウミツバチとは翅脈​で見分けることができるそうです。ニホンミツバチは後翅​の先端の翅脈が2本あるのに対して、セイヨウミツバチは1本しかないとのことでした。また、ニホンミツバチは1匹の女王バチから生まれた働きバチが栄養を集めて生活していて、春になると女王バチは新しい女王バチに巣を譲って、別の巣をつくる「分蜂」をすることで増えていきます。​

ニホンミツバチの観察の様子 ニホンミツバチ
ニホンミツバチの観察の様子

 「トラスト17号地」は谷津であり、江川沿いの河畔林の手前にある湿地保全エリアも含めて12月に草刈りをしています。こうすることで、冬の間に湿地に日の光がたっぷり当たることで多様な植物が生育する環境になっているとのことです。ここには、元々、絶滅危惧種のニホンアカガエルが産卵していた池がありましたが、管理上の問題が発生して、現在は埋もれてしまっていました。今回、その復旧を行ったとのことで、湿地には湧水の池ができていたので、みんなで観察しました。池を造ってからまだ1カ月ということもあり、まだ、生物の痕跡は確認できませんでしたが、生物が利用しやすいように水際を不規則な形にしたり、掘り取った泥は、ビオトープ型の浄化施設のヨシを増やすために活用するなど、自然を豊かにする配慮がされているとのことです。夏になって水草が生えれば、ゲンゴロウ類などの水生昆虫の飛来やトンボの産卵などが期待できると思います。
 この時期は、早春の植物であるノウルシの芽生えの時期です。みんなで確認しましたが、気をつけないと踏んでしまいそうなほど、頭を出した新芽があるのを確認しました。ノウルシの後はチョウジソウも続きますし、将来的には、ノハナショウブやサクラソウなども増やして、多くの人が野草に親しめる場にしていきたいとのことでした。
 また、ここではタカの仲間(猛禽類)のノスリや日本のサギの仲間では​1番大きいアオサギが上空を飛んでいました。ノスリは開けた原野でネズミやモグラなどをエサとして冬を越して、夏は秩父などの山間地で子育てをするそうで、埼玉では比較的よく見れる猛禽類とのことでしたが、エサとなる小型の哺乳類が生息している開けた原野が少ないためか、埼玉県内では絶滅危惧種になっています。

最近再生された湿地内の池 芽生えたノウルシ
復旧された湿地内の池(左)、芽生え始めたノウルシ(右)

湿地保全エリア

 ここは上尾道路建設事業により影響を受ける植物を移植したり、保全のための実験が行われています。地域の方のお話しでは、この辺の湿地には昔は小さな池もあって魚取りをしたり、江川の対岸にはサクラソウが一面に咲いていたという貴重な体験談を教えていただきました。湧水の澪筋などは見えますが、池は確認できないことから、年月の経過とともに枯れ草等が堆積し、少しづつ湿地の乾燥化が進んでいるのかもしれません。

湿地内の湧水の澪筋 地元の方の解説
地元の方の話しでは小学2年生ぐらいまでは池あったとのことです。湿地の乾燥化や樹林への遷移が心配されます。

 昼間に哺乳類が確認できることはほとんどないため、夜間のセンサーカメラで写った動物の紹介がありました。在来種ではホンドタヌキ、ホンドイタチ、ノウサギ、ホンドキツネ、また、本来は丘陵地にいるアナグマが写っており、この地域に生息していることが確認できましたが、やはり1番多いのは特定外来生物のアライグマでした。アライグマは水辺で餌を探すので、カエルなどの水生生物にとっては天敵です。地域のアライグマをどのように減らしていくか、非常に難しい課題ですが生物多様性を保全するためには避けられない課題のようです。​ ​

トラスト16号地

 この湿地も冬の間に、領家まちづくり協議会の皆さんが草刈りを行ったことで、日の光がたくさん当たるようになっていました。こうした保全活動のおかげで、一面に咲くノウルシやチョウジソウの大群落が生育しています。他にも希少な植物が多く確認されており、上尾いきもの調査団でも継続的にハナムグラのコドラート調査を行っていきます。
 ここではキタテハが確認され、蝶に関する解説がありました。昆虫にしては、この時期で成虫はずいぶん成長が早いと思いましたが、蝶も種類によって越冬の形態が異なるそうです。ムラサキシジミ、ムラサキツバメ、キタキチョウ、キタテハは成虫のまま、ゴマダラチョウは幼虫で、モンシロチョウはさなぎで、ミドリシジミは卵で冬を越すそうです。ツチイナゴの時も驚きましたが、昆虫の中にも寒さに耐えられる種類がいるのは意外な発見です。
 また、この保全地は領家工業団地に隣接しています。工業団地の領工会の北林氏からは、河川管理者に対して、自然と調和した治水事業を要望しているとのお話しをいただきました。

領工会北林氏のお話し コウホネが芽生え始めた江川
領工会の北林氏のお話し(左)、絶滅危惧種のコウホネが芽生え始めた江川(右) 

保全管理活動

 今回の保全管理活動は絶滅危惧種であるサクラソウの植栽です。サクラソウは意外ですがヨシと共生関係にあるそうで、最初にサクラソウの季節的な変動(生活史)についての説明がありました。サクラソウはヨシよりも早くに成長して、4月上旬に花を咲かせます。夏には成長したヨシの陰に隠れてしまい、実をつけて葉は枯らすのですが、ヨシがシェルターになって夏の日差しから守っているとのことです。サクラソウは多年草のため、葉が枯れた後もその場所に根が残ります。植物にとって日陰になることは生育環境にマイナスな影響となるように感じますが、種によっては、他の植物との共生関係が欠かせないケースもあるようなので、自然環境の保全を考える際には生態系における各種の関係性を把握することが必要です。そのためには、地道なモニタリングと現地の状況をよく観察することなどが欠かせないんですね。
 そんなことを考慮したうえで今回は、比較的ヨシが多いトラスト17号地にサクラソウの育成苗の植栽を行います。この苗は、対岸のサクラソウトラスト地の株から種を採取して育てたもののため、遺伝子攪乱(いでんてきかくらん)の心配がありません。これがもし、お店で購入した元の生育地が不明な苗を植えると、遺伝子攪乱が発生し生物多様性の損失につながる可能性もあります。生物多様性を保全・回復させるためには、手間がかかっても大切にしなければいけないことあります。

遺伝的攪乱とは:同じ種であっても、人為的に移動した種との交雑により、遺伝子レベルに人の影響が出てしまうこと。各地域における異なる形態などの個性が失われて、生物の進化に影響を与えてしまったり、交雑により遺伝子が均一化してしまうと、環境変化への抵抗力が低くなり、絶滅のリスクが高くなると言われている。

サクラソウの季節変動の解説 植栽前に湿地の土をほぐします
サクラソウの季節的な変動についての解説(左)、植栽前に湿地の土を軽くほぐします(右)

1株づつ埋もれないように丁寧に植栽します 最後に水をまいて完了です
サクラソウの新芽が埋もれないように丁寧に植え付けて、同じところに植えないように目印を立てます(左)
最後に水をまいて完了です。今回は2区画に25株ずつ植栽しました。今後、コドラート調査で生育状況の調査を継続します(右)

集合写真 埼玉大学大学院の深堀准教授より講評をいただきました
参加者で集合写真(左)、埼玉大学大学院の深堀教授より講評をいただきました(右) ​