令和7年11月22日 江川下流域の晩秋の動植物観察と侵略的外来生物管理活動
「上尾いきもの保全調査団」の5回目の動植物調査イベントです。長い夏を乗り越えて、やっと気持ちよく野外活動ができる季節になりました。
今回も県内で幅広く自然環境の保全活動に取り組んでおられる公益財団法人埼玉県生態系保護協会の皆さんに、ガイドしていただきました。また、この日は埼玉大学大学院の藤野教授にも御参加いただきました。
道路沿いの屋敷林
領家農村センターからトラスト17号地に向かう道路沿いの屋敷林で観察を行いました。関東平野の屋敷林は防風林としての目的があるため、冬でも葉がある照葉樹(常緑広葉樹)が多く、アオキ、シロダモ、シラカシの3層構造がよく見られるとのことです。シロダモはクスノキの仲間で、葉が防虫剤となる樟脳に似た独特の匂いがします。他にも雄の木と雌の木があり花も2種あり、雌の木には実と花が同時に見れました・・・実と花が同時に見れるって、違和感ありますね。なんと実は熟するまで1年かかるそうで、今の実は1年前に咲いた花だそうです。他にもヤブツバキ、ノイバラ、マユミなど様々な樹木があり、一言に屋敷林と言っても多くの樹木で構成されていることが分かりました。そういう色々な木で成り立っているので、多くの生物の隠れ家や休憩場所になっているんですね。
また、ここではウグイスのチャッ、チャッという地鳴きが聞こえました。ウグイスの鳴き声というと「ホーホケキョ」が有名ですが、実はそれだけではないのです。鳥の鳴き声もいろいろあって奥が深いみたいです。

様々な樹種で構成される屋敷林を観察しました(左)、シロダモの実(右)
トラスト17号地
「トラスト17号地」の隣接する農地は草地のような環境になっています。今回は昆虫や陸生の小動物が確認されました。3月の調査でも確認されているツチイナゴは、成虫のまま越冬する昆虫です。他には羽が小さいコバネイナゴとオンブバッタが見つかりました。オンブバッタはキク科の植物を好んで食べて、イナゴはイネ科の植物を好んで食べるそうです。昆虫も、よりおいしいと思えるものが食べたいんですね。それとニホンカナヘビが確認されました。ニホンカナヘビの特徴は、ウロコがごつごつしており、顔が恐竜のような形をしていて、姿、形はトカゲによく似ているのですが、分類としてはカナヘビ科であって、トカゲとは別の仲間だそうです。この解説を聞いて、市の担当者は・・・小さい時から街なかで見かけるトカゲだと思っていた生物は、多分ほとんどがカナヘビなんだろうなって思いました。また、鳥類ではバッタ、イナゴ、カエルなどを好んで食べるモズがいました。餌となる昆虫を狙っているのだと思います。
草地での昆虫観察(左)、イナゴやカナヘビはクリアケースに入れて、じっくり観察できました(右)
植物はホトケノザとタチツボスミレが花を咲かせていました。不思議なことは、今までの調査で、ホトケノザは1月に、タチツボスミレは3月に確認されています。1年に2回花が咲くのかな?と思いましたが、日当たりがいい場所だと、季節が違っても花が咲くことがあるとのことでした。植物の世界も意外なことが多いのに気づきます。
17号地は夏の間に生長したヨシが群落となっています。ヨシ原は背丈が高くてうっそうとしているように見えるかもしれませんが、絶滅危惧種のオオヨシキリの繁殖の場になったり、平野部では少なくなっているカヤネズミのすみかになります。人の感覚だけで、自然の良し悪しを決めてはいけないということですね。ちなみにヨシは12月になったら、日照を確保するための湿地保全作業として刈り取りが行われるとのことです。

日の光を浴びて季節外れの花を咲かせたホトケノザ(左)、ヨシ原は貴重な生物のすみかです(右)
湿地保全エリア
続いて、「湿地保全エリア」にきました。ここは上尾道路建設事業により影響を受ける植物を移植したり、保全のための実験が行われています。チ、チ、チとシジュウカラの地鳴きが聞こえました。地鳴きとは日常的な鳴き声で、繁殖期のさえずりとは違う鳴き声です。鳴き声を覚えることで、姿が見えなくても、近くにどんな種類の鳥がいるかがわかるんですね。今回は確認されませんでしたが、11月からは冬鳥のツグミやジョウビタキなども大陸から渡ってくるそうです。
ここではカヤネズミの古巣がありました。オオヨシキリの巣とは異なり、出入り口が普段は閉じていて、出入りするときに横から入るようになっているのが特徴です。ちなみにオオヨシキリは、出入口が上方向についているそうです。
湿地保全エリアに降りてくるとヨシの高さがわかります(左)、カヤネズミの古巣(右)
また、ここではミドリシジミの紹介がありました。ミドリシジミは「県の蝶」で、幼虫はハンノキの葉を食べますが、若い木に好んで卵を産みつけるそうです。17号地や16号地で長年活動しているNPO法人エンハンスネイチャー荒川・江川の小川代表によると、2年に1回ぐらい見るとのことです。かなりレアですね。卵で越冬するので、冬の間に落ちてしまう葉ではなく、ハンノキの幹や枝に卵を産むそうです。ただ、若い木に好んで卵を産むため、木の高齢化は問題です。対策として、ハンノキ林を萌芽更新させて若返りを図る取り組みなどが紹介されました。以前は洪水などで木自体が流されたりして若い林が維持されていましたが、今は雨が降っても水位が上がって水に浸かるだけで、木までが流されることは少ないということです。人の生活にとっては洪水はない方がいいですが、人の生活のために治水をして洪水を減らすのであれば、それと同時に生物の生育・生息環境を整える手助けも必要で、そのようなことを多くの人が知ることで「ネイチャーポジティブ」が進んでいくと思います。
みんなで順番にミドリシジミの卵を観察しました(左)、ハンノキの枝に産みつけられたミドリシジミの卵(右)
昨年の第1回の調査イベントの際に、特定外来生物のカダヤシがいた湧水の水たまりでは、カダヤシとアメリカザリガニの駆除に取り組みました。事前にしかけてあったカゴ罠の引き上げを行ったところ、アメリカザリガニは小型の個体が少数捕獲されたのみでしたが、カダヤシは多数捕獲することができました。やはりいったん侵入してしまうと、これだけ小さな水たまりでも増えることができるので、繁殖力が非常に強いことがわかります。今回は体験的に駆除を行いましたが、根絶などを見据えて本格的に行う場合は、しっかりとした防除計画のもとに実施する必要がありそうです。
ちなみにカダヤシは、在来種のミナミメダカと見た目が似ていますが、尾びれやしりびれの形で見分けることができます。担当者も以前は全然わかりませんでしたが、今ではしっかり見分けられるので、詳しい人に教えてもらって、経験することは大切です。
カゴ罠の引き上げの様子(左)、魚類はすべてカダヤシでした(右)
トラスト16号地
この日は領家まちづくり協議会の皆さんが、湿地の保全活動として除草を行っていました。「トラスト16号地」の隣にはハンノキ、エノキ、ムクノキ、クヌギなどの河畔林が広がっています。この日は秋も深まっていたこともありエノキが紅葉して、黄色い葉になっていました。江川内に生育しているコウホネは最盛期は過ぎているものの、まだ黄色い花を、ぽつぽつと確認することができました。現地を後にしようかなと思ったところで、蝶が1頭捕獲されました。正体はクロコノマチョウといって、かつては主に西日本に分布していましたが、今では埼玉県にも分布が広がっている蝶でした。分布が拡がっている原因は定かではなく、温暖化の影響や幼虫がジュズダマ等の葉を食べるため、ジュズダマ等とともに人為的に拡がった可能性も指摘されているそうです。今のところ、他の蝶が減るなどの影響は確認されていないとのことでした。
湿地の様子やサクラソウの移植場所を確認しました(左)、江川のコウホネの観察(右)

クロコノマチョウの観察の様子
保全管理活動
この日の上尾いきもの保全調査団による保全管理活動は、第2回の調査イベントの際に、伐採した竹の事後活用です。埼玉県生態系保護協会が助成金を受けて、竹をパウダー状のチップにしてありました。それを、外来植物の生育防止を目的として、「トラスト16号地」の周辺に撒く作業です。みんなで協力して一輪車やバケツなどにチップを積んで、16号地まで運んでから、熊手で敷均しました。長靴を履いていても、チップが靴の中に入って、チクチクしていました。効率よく作業を進めるためには、そういう所にも注意が必要ですね。
竹チップの運搬作業の様子。竹チップにより外来植物が抑制されます。
熊手を使って竹チップを敷きならします(左)、埼玉大学大学院の藤野教授に講評をいただきました(右)
この日に御参加いただいた上尾いきもの保全調査団の皆さんで集合写真

