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令和6年11月10日 秋の動植物観察と外来植物管理活動

印刷用ページを表示する 掲載日:2024年11月26日更新 ページID:0382103

 この日は、上尾いきもの保全調査団の初めての動植物調査イベントでした。12名の調査団員の皆さんと埼玉大学大学院の藤野教授に御参加いただき、市の職員とともにイベントスタートです。調査イベントについては、県内で幅広く自然環境の保全活動に取り組んでおられる公益財団法人埼玉県生態系保護協会の皆さんが、調査対象地での解説や見つかった動植物の同定(種類を見きわめること)などを行います。

トラスト17号地

 トラスト17号地では、長年この場所で自然環境の保全活動に取り組んでおられるNPO法人エンハンスネイチャー荒川・江川の小川代表より、活動内容の解説をしていただきました。早春にきれいな花を咲かせる植物は、冬の間にたくさんの太陽をあびることが大切であるため、太陽の光をさえぎってしまう枯れ草を、野焼きをして除去しているとのことでした。
 次に野鳥観察です。この時期に見られる代表的な野鳥としてモズがあげられますが、この日は残念ながら鳴き声しか聞こえませんでした。こういったことも野外の調査ではよくあることです。モズは「はやにえ」と言われる少し変わった習性があります。捕らえた昆虫などをその場で食べないで、木の枝などに突き刺しておくのです。そんな不思議な状況も今後確認できるかもしれません。ちなみに、そのような行動をする理由は諸説あるようですが、エサが少なくなる冬場に向けた備えであり、10月ぐらいから「はやにえ」を行うようになるそうです。

領家まちづくり協議会さんのご厚意で、領家農村センターが活動拠点となります 小川代表にトラスト17号地について解説していただきました
領家まちづくり協議会さんのご厚意で、領家農村センターが活動拠点となります(左)
小川代表にトラスト17号地について解説していただきました(右)

 次は残念ながら外来種のお話しです。この周辺は江川に近く、この時期は地下水位が高いために通路がぬかるんでいたため、2日前に板を敷いていました。そうしたところ、その板に特定外来生物のアライグマの足跡が見つかりました。アライグマは畑の作物などを食べてしまう以外にも、野外で両生類や鳥のヒナなど様々な生物を捕食するため、在来種の生態系に大きな被害を与えてしまいます。ペットとして輸入された個体が、飼いきれなくなって逃がされたりして野外に定着したと考えられています。なお、現在では外来生物法により、アライグマは飼育、運搬、輸入、販売等が禁止されています。

アライグマの足跡が発見されて、その場で解説しました 板についたアライグマの足跡
アライグマの足跡が発見されて、その場で解説しました(左)
板についたアライグマの足跡。5本指がしっかりとつくのが特徴です(右)

湿地保全エリアの水たまり

 この水たまりには、数年前は絶滅危惧種のミナミメダカが生息していたそうです。魚を発見!と思いのぞき込んでみたところ…残念ながら特定外来生物のカダヤシでした。カダヤシはメダカに似ている小さな魚ですが、メダカに対して威嚇行動などを行い、ストレスを与えてしまう存在とのことでした。結果として、今ではこの水たまりでミナミメダカは確認できていない状況です。元々江川に生息してたカダヤシが河川の洪水時の水位上昇によって入り込んでしまったようです。自然現象なのでやむを得ないとはいえ、絶滅危惧種の生息環境をどのように守っていくのがいいか…考え深いできごとでした。

 おおもとをたどれば江川にカダヤシを持ち込んでしまったのは、私たち人間です。外来種問題を起こさないようにする基本は、「生物を持ち込まない!」、「外来種を拡げない!」ことです。上尾市では外来種問題を引き起こさないようにする普及啓発にも取り組んでいます。是非、「放流ダメちらし」を読んでください。

「放流ダメちらし」はこちらをクリックしてください。

魚がいるとのぞいてみましたが、残念ながらカダヤシでした ヨシ原の代表的な生物としてカヤネズミを紹介しました
魚がいるとのぞいてみましたが、残念ながらカダヤシでした(左)
ヨシ原の代表的な生物としてカヤネズミを紹介しました。日本で1番小さなネズミです(右)

トラスト16号地

 トラスト16号地も、NPO法人エンハンスネイチャー荒川・江川の皆さんが自然環境の保全活動に取り組んでいる場所ですが、数年前より領家まちづくり協議会の皆さんが保全活動に参加しています。まち協の松本氏より除草、保全に支障となる樹木の伐採、竹林の管理などに取り組んでいるとのお話がありました。また、江川の流域は、約60年前までは腰ぐらいまでつかる田んぼがあって、早春には花を咲かせる多様な植物が生育していたとのお話しがありました。地域の皆さんの記憶に残る原風景を、次世代につないでいきたいところです。
 ここでは自然に倒れてしまったクヌギの大木がありました。写真のとおり根がめくりあがった感じです。地下水位が高いと根が下に伸びないため、樹木の地上部が大きくなると倒木しやすくなるようです。一般的には倒木すると色々と大変なことがあるのですが、自然環境の視点で見ると、根がめくりあがったところに周辺と違う環境ができるため、生物のすみかや隠れ家になったりすることがあるとのことでした。ちなみここでは鹿!?かもしれない足跡が確認されました。

領家まちづくり協議会の松本氏の解説 倒木したクヌギの根元は豪快に根がめくりあがっていました
領家まちづくり協議会の松本氏に保全活動や地域の環境について解説していただきました(左)
倒木したクヌギの根元は豪快に根がめくりあがっていました(右)

 この後、河畔林を散策しました。河畔林の代表的な樹木としてクヌギ、ハンノキ、エノキ、ムクノキがあるという解説があり、なんとハンノキ、エノキ、ムクノキが仲良く並んでいるところがあり、それぞれの樹木の違いが間近で観察できました。ちなみにハンノキは「県の蝶」のミドリシジミ、エノキは「国蝶」とされるオオムラサキの幼虫のエサとなります。しかし、残念ながらオオムラサキについては最近は確認されていないとのことでした。

河畔林の散策の様子 折れているのがハンノキ、右にエノキ、ムクノキと続きます
河畔林の散策の様子(左)、折れているのがハンノキ、右にエノキ、ムクノキと続きます(右)

湿地保全エリアにおいて侵略的外来種セイタカアワダチソウの除去作業

 今回のイベントの最後に、調査団員の皆さんと市の職員が協働して、湿地保全エリアの外来草除去に取り組みました。ターゲットは侵略的外来種のセイタカアワダチソウです。侵略的外来種とは、地域の自然環境に大きな被害を与え、生物多様性を脅かす外来種であり、生態系被害外来種防止リストなどで選定されています(外来生物法で指定されている特定外来生物はすべて含まれています)。
 最初に、セイタカアワダチソウの特徴の解説があり、作業に取り掛かりました。この時期はちょうど黄色の花を咲かせていてわかりやすく、調査団員の皆さんは在来種のオギやヨシにまぎれて生えているセイタカアワダチソウを除去していただきました。セイタカアワダチソウは多年草であるため、根が残ってしまうとまた来年生えてきてしまうため、できるだけ根っこから抜くように心がけました。

セイタカアワダチソウの特徴と抜き方を聞いてから作業スタートです みんなで協力してセイタカアワダチソウを選んで抜き取ります。自然と抜く人や運ぶ人に分担して作業を進めました
セイタカアワダチソウの特徴と抜き方を聞いてから作業スタートです(左)
みんなで協力してセイタカアワダチソウを選んで抜き取ります。自然と抜く人や運ぶ人に分担して作業を進めました(右)